ルミナコイド不足は次世代に影響も
スタンフォード大学微生物学・免疫学ソネンバーグ博士は、食物繊維などの難消化性食物成分(ルミナコイド)の摂取量が不足すると、腸内フローラの多様性が大幅に失われ、親から子へと受け継がれる腸内細菌の能力にも影響を及ぼすことを明らかにしています。*(1)
ソネンバーグ博士は、MACs:Microbiota-accessible carbohydrates 腸内細菌に届く炭水化物」と呼んでいます。
腸内フローラは、免疫機能や代謝など、人間が生きていくために様々な側面で基本的な役割を果たしています。*(2)(3)
そして、食物繊維など難消化性炭水化物・MACsは、この腸内細菌の生態系の形成に決定的な関与をしています。腸内常在菌の多様性を維持するためにはルミナコイドがとても重要です。
自閉症、自己免疫性疾患、動脈硬化、肥満、がん、非アルコール性脂肪肝などの疾患と腸内常在菌の多様性の欠如した状態(シンバイオシス)とが相関性があることは既に明確になっています。
免疫学ソネンバーグ博士の著書
腸内細菌を復活させ、健康な人生を過ごすにはどうすればいいのか。そもそも人はいつからどのように細菌と共生し、老いていくのか。微生物学・免疫学の研究者夫妻が、最新研究の成果をわかりやすく解説し、すぐに実践できる生活改善策をアドバイス。
しかし、現代の欧米型の食生活は、伝統的なものと比較して、高脂肪、消化吸収しやすい炭水化物が多く、MACsが著しく減少しています。*(4)
ヒトの腸内フローラを移植したマウスを使って研究では、低MACs食を続けることで腸内常在菌の多様性を一旦失っても、MACs食に戻すことで、1世代以内であれば腸内常在菌の多様性は復元しました。
ところが、数世代にわたって低MAC食を続けると、多様性が徐々に失われ、食事にMACsを再導入しても、腸内常在菌の多様性は回復しないことが分かりました。
長い歴史をかけて、私たちと共生してきた常在菌との関係ですが、現代のルミナコイド不足の食生活は、この共生関係に悪影響を及ぼし、子供たちの将来の健康に大きな影響を与えてしまう可能性があるかもしれません。
出典:
*(1) “Diet-induced extinctions in the gut microbiota compound over generations” Nature 529:212-215 (2016)
*(2)”Interactions between the microbiota and the immune system. “Science 336, 1268–1273 (2012)
*(3)”Assessing the human gut microbiota in metabolic diseases.” Diabetes 62, 3341–3349 (2013)
*(4)” Starving our microbial self : the deleterious consequences of a diet deficient in microbiota-accessible carbohydrates.” Cell Metab. 20, 779–786 (2014)