肌を老けさす「コゲ(糖化)」や「サビ(酸化)」こそ、
根本対策を!
みずみずしく、はりのある肌。いくつになっても、実年齢よりも若々しく在りたいもの。若さを求めて美容にお金や手間をかける前に、実はやっておきたいのが、肌のうるおいや弾力の理由を知り、そのための根本対策を講じること。つまり“肌への理解”である。
~はじめに~
うるおいは、肌内部のセラミドやヒアルロン酸といった脂質などの成分のおかげ。いずれも加齢とともに減少するため、肌のバリア機能も損なわれ摩擦や紫外線に晒され、結果としてシミやシワに繋がりやすくなると言われている。
さらに、セラミドやヒアルロン酸が酸化することで、老化が促進されることも知られている。ご存知、活性酸素によって身体が「酸化」する(=サビる)メカニズムである。酸化反応そのものは日常的に生じているのだが、ストレスや炎症などが原因で活性酸素が過剰に発生し、不用意に細胞を傷つけることが問題視されている。
1. はりのある肌の弾力を阻害する難敵=糖化。
一方、はりのある肌の弾力は、コラーゲンやエラスチンといったタンパク質のおかげ。これらも加齢によって減少するだけでなく、体内の余分な糖と結びつく「糖化(=コゲる)」が問題視されている。体内のタンパク質が糖と結びつき、「終末糖化産物(AGE)」という代謝産物となって体内に蓄積することで、強い毒性を持ってしまうのだ。
AGEは、糖の長期にわたる過剰摂取により体内で作られる。さらに、タンパク質と糖質を同時に加熱調理した食品を摂ることでも体内に蓄積することが知られている。しかも、一度体内に溜まったAGEは、二度と元のタンパク質と糖質に分解されることはないという。
さらに恐ろしいのは、糖化によって活性酸素が発生し、活性酸化が糖化を促進するという、まさにデフレスパイラルが進行する点だ。糖化が酸化を助長してタンパク質を劣化させることで、老化が加速してしまうのである。
2. AGEから肌も、身体も守るには、“逃げるが勝ち”である。
AGEが関係する疾病や症状には、糖尿病、肥満、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、高血圧などの生活習慣病のほか、骨粗鬆症、アルツハイマー型認知症、うつ、白内障、シミ、シワ、歯周病、がん、感染症なども挙げられるという。
こうした酸化と糖化による老化プロセスを知ってしまうと、付け焼刃の対処法では済まないことが理解できる。しかし、肌をはじめ、身体の老化のスピードを緩めるために私たちにできることも、プロセスを知ることで自ずと見えてくるのだ。
それは、AGEの発生や摂取をなるべく避けること。糖質の長期にわたる過剰な摂取を止め、タンパク質と糖質を一緒に加熱調理した食品を避けること。高温で調理された食品や加工食品もAGEが多く含まれている。まさに、逃げるが勝ちなのだ。
高糖質な食品を避けるだけでなく、食後の急速な血糖値の上昇を招かないような低GI(グルセミックインデックス)の食品を選ぶことも効果的だ。加えて、食後に身体を動かし、急速な血糖値の上昇を避ければ、申し分なしである。
身体を動かすことは、家事や散歩、エレベーターではなく階段を使うなど、いわゆる「NEAT(ニート=非運動性活動熱産生)でも十分効果がある。そのうえで、過剰な活性酸素の発生を抑える。喫煙や大気汚染、ストレス、紫外線を避けることで、デフレスパイラルの速度を緩めるのだ。
3. 攻めの対策の“カギ”は、「ルミナコイド」。
ここまでの“守りの対策”に対して、“攻めの対策”も提案したい。それが“腸活”である。腸活の基本は、腸内に住む1000種類、40兆とも言われる腸内細菌たちの多様性を守ること。そのためには“腸内細菌のエサ”が重要と言われている。食物繊維やレジスタントスターチ、オリゴ糖、イヌリンといった、最近よく目にする“腸活”栄養素たちである。
こうした“腸活”栄養素は、個別に語られることが多いが、実は、バランス良くどれも摂取する必要があるという。こうした考え方に基づき、最近では“腸活”栄養素を「ルミナコイド」という総称(「発酵性食物繊維」とも呼ばれている)で呼ぶようになってきた。
“攻めの腸活は、難消化性食物成分であるルミナコイドを、糖質と一緒に摂ること。ルミナコイドの摂取によって、食後の血糖値が急激な上昇が抑えられるので、糖化(コゲ)の発生を防ぐことが可能だ。
さらにルミナコイドを摂取することで、酸化(サビ)の発生まで防ぐことができる。ルミナコイドをエサに腸内細菌が大腸で代謝(発酵)するプロセスで、抗酸化作用のある水素を産生するからだ。ルミナコイドでの腸活が肌に働き、ひいては老化の速度をも遅らせる。こうした万全の対策を講じてこそ、美容のチカラも活かせるはずだ。
記事監修
皮膚科医、内科医、梅花大学客員教授。
都内2カ所のクリニック勤務の傍ら、医療の観点から美容と健康を追求し、
美しく生きるための啓蒙活動を行う「キレイをつくる医師」として、
医療現場だけでなく、さまざまなメディアでも活躍している。
構成・文/大田原 透